チェコで楽しめる旬の野草

2021年06月21日

季節ならではの旬の食材を楽しむのはある意味でとても幸せな時間ですよね。
チェコでも日本と同じように旬の食材を楽しむことができるのですが、日本と大きく違うのは森や公園、道端に生えている野草などで自ら摘んだ野草などで旬を楽しむ人が多いこと。
もちろん日本でもそのように旬を楽しんでいる人は多くいますが、チェコはそれがもっと身近なイメージです。チェコ人は花や木にも詳しい人が多くハーブも身近。
今回はチェコで楽しめる春から初夏の旬の野草をご紹介していきます。

日本でも人気上昇中!エルダーフラワー

チェコでは5月末くらいから6月に咲く花「エルダーフラワー」。
チェコでは「Bez černý(ベズ チェルニー)」、または、逆にしただけですが「Černý bez(チェルニーベズ)」と呼ばれています。
日本語でいうと「西洋ニワトコ」。
ん?ニワトコ?聞いたことあるかも? と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。「ハリーポッター」で出てくるあの杖はあれはこの西洋ニワトコ=エルダーフラワーの枝なんです。
エルダーフラワーはどんな花かと言うと、白く小さな花が集まった花。エルダーフラワーの木には、たくさんの花を咲かせます。
そんなエルダーフラワーはチェコでは公園、道端などに普通に見かけることができ収穫できます。エルダーフラワーが愛される理由としてはその香りのよさはもちろんですが、薬用としての効能があることでも知られています。風邪や喉の痛み、発汗作用、利尿作用、痛風、リウマチ、リラックス効果などにも効果があると言われ、お茶などでもよく飲まれています。
このような効能があることからチェコでは愛されている植物、ハーブの1つなのですが今の時期(今は6月初めです)、私もよく摘みに行きます。道端や公園などにも普通に生えていることが多いのですが、排気ガスを浴びたものを使いたくないので車が走らない場所にある木を狙って摘んでいます。ただ、草むらをかき分けていくこともあり、次の章で触れますが「イラクサ」をかき分けていく時には心して挑んでいます。花を摘む時の花の選び方ですが、チェコの家族が言うには蕾だらけのものはまだ早すぎるというので、花が満開になるタイミングで摘んでいます。その摘んできた花でシロップを作っていますが、そのシロップのおいしいことと言ったら!レモンと砂糖などを入れて作るのですが、作ったシロップを炭酸水で割って飲むと、すっきりした気分になります。
また、チェコではシロップ自体もスーパー等で入手できます。ここ数年、日本でも人気上昇中で知名度が上がってきているせいかシロップなどは入手しやすいようなので気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

さて、このエルダーフラワーですが、花が終わり夏も終わりに近づくころには黒い実を付けます。チェコ語になっているBez černýのčernýは直訳すると「黒」。この黒い実からそう名付けられているのでしょうね。黒い実もビタミンCが豊富だそうでシロップやワイン、ジャムが作られたりします。
この時期ならではの旬のBez černý、今年もたくさん摘んできてシロップ作りに励もうと思います。

電気が走るような痛み!西洋イラクサ

日本では「ネトル」でご存知の方もいる西洋イラクサ。ネトルティーなどで有名ですね。
イラクサと言っても、日本にあるイラクサとチェコにある西洋イラクサは別種なんだとか。チェコ語ではKopřiva(コプシバ)と言いますが、チェコではこの西洋イラクサがそこら中に繁殖しています。西洋イラクサは見た目がどことなく青じそに似ていることもあり、日本人で西洋イラクサの存在を知らない人は思わず触ってしまいますが(かくいう私もその1人でした)、触ったらアウト、電気が走るような痛みが走り、その痛みはすぐに治まらない場合もあり、赤く腫れたり蕁麻疹を起こす人もいます。
見た目は青じそに似てますが、有毛のトゲがあるので要注意の植物です。ただ、この西洋イラクサ、ハーブとしてはとても有能で薬用、お茶として飲まれています。血液を作ったり浄化したりと、血液のトラブルを改善させる効能があり、ビタミン、鉄分なども豊富なことから、ヨーロッパでは治癒効果、体質改善のハーブとして使われています。
個人的に味は「おいしい」とは思いませんが、他のハーブとミックスしてみると飲みやすくなるかなとは思います。この西洋イラクサ、本当に繁殖力が強すぎてそこら中に生えています。森にも道端にも庭にも・・・
エルダーフラワーの章で少し触れましたが、私が摘みに行く野生のエルダーフラワーの木の周りにはこの西洋イラクサたちが取り囲んでおり、このイラクサの壁を乗り越えた者のみが勝利のエルダーフラワーを入手できる!というような感じで、腰の高さくらいにまで伸びたイラクサだらけなんです。

このイラクサに触れないように歩く術をチェコの家族に教わり(触れる前に踏み倒していくだけですが)、勝利のエルダーフラワーの花を手にしています。ヨーロッパではイラクサは童話にも描かれることもあり、アンデルセン童話「白鳥の王子」では魔法によって白鳥に変えられてしまった11人の王子(兄)を助けるため、妹である王女はトゲだらけのイラクサで痛みに堪え傷だらけになりながらも11枚の服を編み、それを白鳥に変えられた王子に着せると魔法が解けるという童話があります。

イラクサの痛みを知る一人としては、童話のストーリーよりもイラクサを編むってスゴイ・・・と感じます。お茶用に摘むのさえ痛くてグローブなしでは摘めないので。

森の中で争奪戦!クマも大好き「クマニンニク」

最後にご紹介するのが「クマニンニク」。チェコ語では「medvědí Česnek(メドヴェデイ チェスネク)」と呼ばれています。チェコ語でクマは「medvěd、ニンニクは「česnek」なのですが、春になるとクマニンニクが大好物なクマが冬眠から目覚めるという理由から、このような名であると聞いたことがあります。
例年であれば4月後半くらいが旬ですが、今年は寒かったせいもあり5月末でも見かけました。ニラのようなニンニクのような、ネギのような香りが漂うクマニンニクですが、素人でも公園やハイキングコースなどでも見つけることができます。ただ、素人では少し見分けが難しいかもしれません。

私はファーマーズマーケットでよく見かけるので、根っこ付きのクマニンニクを購入し、苗で育てています。このクマニンニク、チェコではスープにしたり、バジルペーストのようにペーストにしてパスタと絡めたりする人が多いようですが、ニラのような香りがするので私は餃子を作っています。
一年の間でこの時期だけの旬のクマニンニク、ファーマーズマーケットなどでみかけたら手にとってみるのがおすすめです。

チェコで暮らすようになってから自然との距離がグッと近くなりました。
普段当たり前すぎてあまり意識していなかった雑草の中には、身体にいい野草などもたくさん紛れ込んでいたりするのかもしれませんね。