日本とチェコの子育てに違いはあるのか?それぞれの視点と比較してみます

2023年08月01日

チェコに住んで子育てに励んでいます。

「育児ノイローゼ」や「ワンオペ育児」など育児に関するネガティブとも受け取れるな言葉を耳にする機会が増えたのは、私が子育て真っ最中だからという理由だけではない気がします。

子育てに関してはおそらく、その土地の風土や文化などでも異なるものですが、「子供を育てる」という点では同じはず。

ですが、チェコで生活し子供を持つ日本人のお母さん達からは「チェコは子育てしやすい」とか「子供に優しい」という話を聞くことがよくあります。

私は日本への里帰りは1年に一回程度ですが、そんな私も子供と一緒ならチェコの方が過ごしやすいかもしれないなと感じることが少なくありません。

それって、なぜでしょう?

チェコの空の下に日本の布オムツがひらひら。
チェコの空の下に日本の布オムツがひらひら。

1.もし今私が、日本で子育てしていたら…

・夫が不在になりがち

 おそらく夫の帰りは遅く、飲み会もそれなりにあるでしょう。

 よって子供が朝起きてから夜眠るまで、ほぼ全ての子供のケアを自分(母親)一人で行うことに。

 ・仕事と育児

 出産後の育児休暇はおそらく1年間。子供の1歳と言ったら、食事や着替え、ほぼ全てにおいてまだまだお手伝いが必要な時期。そんなお世話をしながら、さらに自分の仕事も。

 ・外出しにくい

 1、2歳でもまだまだ一人歩きは大変だしお昼寝も必要な時期なのでベビーカーは必要。抱っこ紐という選択肢もあるけれど、大きくなればそれなりに体重も増えるので、お母さんへの負担も大きい。

 今だに階段しかない駅なども多いです。(またはエレベーターに乗るためには遠回りが必要なことも。)

 ・外出時に周りの目が気になる

  特に公共交通機関を利用する際、小さい子供を連れているだけでも気になる周りの人の目、ベビーカーを使用していたらなおさらです。

2.それがチェコだと?

 ・夫は定時に帰宅

 チェコで仕事をしている人は、子供がいるいない、男性女性に関わらず、定時に帰る人が多いです。

 子供の幼稚園や学校の送り迎えを夫婦で分担している家庭も多くあります。

 夕方の公園には仕事帰りのパパの姿もちらほら…。

 ・育児休暇は最長3年間

 中には数ヶ月で職場復帰する人もいますが、多くのお母さんたちは3年間の育児休暇を消化します。

 その間に子供と一緒にベイビースイミングや体操教室に通う親子も多くいます。

 ・ベビーカーでの行動範囲に制限をほとんど感じない

  バスやトラムはバリアフリー車両が多く、またそうではない(階段がある)車両だとしても誰かが手伝ってくれる場合がほとんどです。

  また、バスやトラムにはベビーカー用のスペースが確保されているので、他の乗客に気を遣うことなく乗車することができます。

 ・子供だから許されることが多い

  ちょろちょろ動きたがる小さい子供連れで、広いスーパーをあちこち動くのは至難の技。

  スーパーでの買い物中、子供が会計前のパンを食べていても後できちんと申告し清算すれば問題ありません。よって会計前であっても、売り物のパン(パッケージに入っていない、だいたい10円程度の最も安価なパン)をすぐ子供の手に持たせてカートに座らせることで、少しだけゆっくり買い物をすることができます。そしてスーパーでは、同じように10円パン(正しくはロホリークという細長いパンです)を持ってカートに座っている子供を見ることが多くあります。

  ・子供を連れているだけで周りとの距離が近くなる

公共交通機関への乗車中、子供が騒いだとしても嫌な顔をする人は少なく、むしろ子供に話しかけたり、赤ちゃんの場合は親に話かけてきてくれる人が多いです。

旧式のトラムですがベビーカー用のスペースがあり、階段を持ち上げる時には手を貸してくれます。
旧式のトラムですがベビーカー用のスペースがあり、階段を持ち上げる時には手を貸してくれます。

3.日本は親切な国ではないの?

 日本を訪れた外国人から、「日本は親切な国だから…」ということを聞くことがありますが、だったら子供にも優しい、子育てしやすい環境なんじゃない?と思いませんか? アレ??? 

 日本人は「他人に必要以上に関わらない」とか「恥ずかしがり屋」という人も多く、ひとつの行動の裏にあるその人の感情を読んだりもしますよね。

「小さな親切、大きなお世話」なんていうことわざもあるくらいです。

実際に困っている人(例えばベビーカーを押しながら大きな荷物を持ってどう見ても大変そうなママ)を目にした時に、「荷物持ってあげようかな」「でも嫌がられたらどうしよう」「どう思われるかな」「周りの人はどう思うかな」等と、色々考え過ぎてしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。そしてそんなことを考えている間に、チャンスを逃す…なんていうこと。

 ここチェコで生活していると、おそらくあまり深く考えずに手を貸してくれる人がほとんどです。

 目の前に困っている人がいる、だから手伝う。

 もし「結構です」「大丈夫です」と断られても、「ああ、そうか」で終わりだと思います。

 そして声を掛けて断られた経験のある人でも、次もまた同じように困っている人を目の前にしたら同じように声を掛けると思うのです。

 これが日本人だったら(私も含め)、次回は声を掛けるのをためらってしまうのではないでしょうか。

 シンプルというか、言葉や行動の裏にあるもの、実は〇〇だったんじゃないか…ということを考えることが日本人に比べるとそう多くはないのかもしれません。もしくは日本人は言葉や行動の裏にあるものを考えすぎてしまうのでしょうか?

4.チェコは良いところばかり?日本はダメ?

 そんなことはありません。

 チェコでは赤ちゃんや子供に対して寛容ではありますが、見ず知らずの人から助言(?)を頂くこともしばしば…。

 例えばバスで乗り合わせたご婦人から「(赤ちゃんに)靴下を履かせなきゃだめじゃない」「帽子はちゃんと被せなきゃだめよ」と言われたことは1度や2度ではありません。(チェコでは季節に関わらず、低月齢の赤ちゃんの靴下と帽子は必須なようです)

 日本でも、赤ちゃんや小さい子供を連れている時に暖かい眼差しや声をかけてくれる人はいますし、電車や地下鉄で席を譲ってもらった経験もあります。

 そして日本人が持つ他人に対する気遣い、実際の言葉や行動の裏にある気持ちを考えることが、細やかな気配りなどに繋がる場合もあります。

 何より、日本のショッピングセンターやデパートには綺麗なオムツ交換・授乳スペースが確保されている事が多いですよね。それは小さい子を持つ親としてはとても嬉しいことです。また、日本の空港の子供に対する設備の充実さとスタッフの気遣いは世界でもトップクラスなのではないでしょうか。

 遠く離れた日本とチェコ、文化や働き方の違いによって子供を取り巻く環境にももちろん違いがあります。

 ですが、子供を思う気持ちや家族を大切にしたいと思う気持ちにはそう大きな違いはないはず。その気持ちの通りに動ける社会環境という点で、もしかしたら少し違いがあるのかもしれませんね。